船橋市は9月6日、ワクチンの集団接種再開を発表するとともに、今後のワクチン接種計画を発表した。それによると、11月末までに希望する市民に2回のワクチン接種を完了するとしている。

市の発表内容と検証のポイント

市が発表した内容は次の通り。「新型コロナウイルスの接種について」より

 国の示している供給量やスケジュールに基づき、今後の市の接種計画を作成しました。この計画で、国が接種完了の目標として掲げている11月末までに、希望する市民(接種率8割)への2回のワクチン接種を完了できる見込みです。

(1)接種券送付者数 58.5万人×2回=117万回分(必要ワクチン数)

(2)目標(接種率8割)人数 46.86万人×2回=93.7万回分(必要ワクチン数)

(3)8月30日現在接種済み回数 53.8万回(26.9万人)

(4)今後の必要接種回数 (2)-(3)=39.9万回19.95万人

この計画を見た時、ヘラルド船橋編集部では二つの疑問を感じたのでそれを検証していきたい。その疑問とは次の2点。

  1. ワクチンを希望する市民は8割という設定は適切か
  2. 今後の必要接種回数は適切か

以下、それぞれ見ていきたい。

ワクチンを希望する市民が8割という設定は適切か

まず、この船橋市の接種計画はワクチン接種を希望する市民が8割という前提に立っている。しかし、次の点から8割というのは少なすぎるのではないかと推測できる。

  1. 船橋市の65歳以上の高齢者の接種率は85%を超えている
  2. 河野大臣が最終的な接種率は88%になりそうだ、と公表

1.船橋市の高齢者の接種率が85%以上

9月9日現在、市内の高齢者の接種率はすでに85%を超えている。仮に64歳以下の接種希望者が8割だったとしても不足が生じる計算になる。

65歳以上と64歳以下で接種を希望する割合に違いがあるというデータは現状なく、前提としては高齢者の接種率などを元にするのが適切ではないか。

2.河野大臣が最終的な接種率は88%ほどになりそうだと公表

ワクチンを担当している河野大臣が、9月6日に最終的な接種率は88%になりそうだと公表したと日経新聞は伝えている。船橋市の高齢者で見ても、9月9日現在で85.64%、1日あたり0.05%程度は少ない日でも増加している。このままいくと約50日後(10月末頃)には88%に達する見込みで、概ね河野大臣の公表に近い割合となる。

8割が希望するという想定だと希望者の接種は完了しないと推測

以上の点を考えると、ワクチン接種希望者が対象者の8割というのは少なく見積もりすぎではないかと思われる。高齢者とほぼ同等の割合で接種が進むと考えると、河野大臣が公表した88%から90%程度が適切だと思われ、11月末までには接種完了は厳しいと思われる。

今後の必要接種回数は適切か

もちろん、国からのワクチン供給がないと接種はできないため、国や県から示されたワクチン供給量が接種対象者の8割だったためこの計画になったとも考えられる。実際、上記日経新聞の記事では、「10月上旬までに12歳以上の人の8割が2回接種するのに必要な量のワクチンを自治体に供給する」としている。

しかし、それでも今後の接種回数に対する疑問は残る。それは、前提となっている8月30日の接種済み回数が不適切ではないか、と考えられるからである。

8月30日の実際の接種済み回数は48.9万回

ヘラルド船橋編集部では、8月30日に市が公表した接種済み回数を確認したところ、1回目の接種が終わったのが269,970人、2回目の接種が終わっている人数が219,715人となっていた。両方を合わせると489,685回となる。(また、上記9月9日現在の「船橋市ワクチン接種率全年代」グラフによると、9月9日時点で1回目が304,742人、2回目が245,025人で、合わせて549,767人となる。ここから見ても計算が合わない。)

船橋市は「8月30日現在接種済み回数 53.8万回(26.9万人)」としているが、実際には5万回近く少ない計算となる。これは、おそらく1回目接種完了人数(269,970人)から算出したためでは、と推測される。

よって、8割の人に接種すると仮定した場合でも、53.8万回-48.9万回で4.9万回分ワクチンがさらに必要となる。つまり、市の試算で算出された39.9万回に4.9万回をたした44.8万回が対象者の8割に接種するのに必要な計算となる。

3.4万回分不足する計算

船橋市は、公表した接種計画で、11月30日までに41.4万回の接種を行うとしている。すると、実際の必要量44.8万回から計画接種回数(見込み)41.4万回を引いた3.4万回が不足する計算となる。

期間接種回数(見込み)接種人数(見込み)
8月30日から9月12日5.1万回2.55万人
9月13日から9月26日6.3万回3.15万人
9月27日から10月10日7.9万回3.95万人
10月11日から10月24日7.5万回3.75万人
10月25日から11月7日6.7万回3.35万人
11月8日から11月21日4.9万回2.45万人
11月22日から11月30日3.0万回1.5万人
41.4万回20.7万人

ワクチンを接種したい人が確実に接種できるように

ここまで市のワクチン接種計画を検証してきたが、重要なことは計画そのものではなく、実際にワクチンを接種したい人が確実に接種できることにある。

船橋市の接種計画もモデルナ製ワクチンなどによる職域接種を除いて計算した計画であることも考えられるため、現段階で不足が確実と指摘するものではない。最終的に11月末までに希望する市民への接種が終わることが重要であり、柔軟かつ確実な接種を期待したい。

https://herafuna.com/wp-content/uploads/2021/09/c7142569c795820d651c691a0689228e.pnghttps://herafuna.com/wp-content/uploads/2021/09/c7142569c795820d651c691a0689228e-150x150.pngherafunaニュースワクチン接種,ワクチン接種率船橋市は9月6日、ワクチンの集団接種再開を発表するとともに、今後のワクチン接種計画を発表した。それによると、11月末までに希望する市民に2回のワクチン接種を完了するとしている。 市の発表内容と検証のポイント 市が発表した内容は次の通り。「新型コロナウイルスの接種について」より  国の示している供給量やスケジュールに基づき、今後の市の接種計画を作成しました。この計画で、国が接種完了の目標として掲げている11月末までに、希望する市民(接種率8割)への2回のワクチン接種を完了できる見込みです。(1)接種券送付者数 58.5万人×2回=117万回分(必要ワクチン数)(2)目標(接種率8割)人数 46.86万人×2回=93.7万回分(必要ワクチン数)(3)8月30日現在接種済み回数 53.8万回(26.9万人)(4)今後の必要接種回数 (2)-(3)=39.9万回(19.95万人) この計画を見た時、ヘラルド船橋編集部では二つの疑問を感じたのでそれを検証していきたい。その疑問とは次の2点。 ワクチンを希望する市民は8割という設定は適切か今後の必要接種回数は適切か 以下、それぞれ見ていきたい。 ワクチンを希望する市民が8割という設定は適切か まず、この船橋市の接種計画はワクチン接種を希望する市民が8割という前提に立っている。しかし、次の点から8割というのは少なすぎるのではないかと推測できる。 船橋市の65歳以上の高齢者の接種率は85%を超えている河野大臣が最終的な接種率は88%になりそうだ、と公表 1.船橋市の高齢者の接種率が85%以上 9月9日現在、市内の高齢者の接種率はすでに85%を超えている。仮に64歳以下の接種希望者が8割だったとしても不足が生じる計算になる。 65歳以上と64歳以下で接種を希望する割合に違いがあるというデータは現状なく、前提としては高齢者の接種率などを元にするのが適切ではないか。 2.河野大臣が最終的な接種率は88%ほどになりそうだと公表 ワクチンを担当している河野大臣が、9月6日に最終的な接種率は88%になりそうだと公表したと日経新聞は伝えている。船橋市の高齢者で見ても、9月9日現在で85.64%、1日あたり0.05%程度は少ない日でも増加している。このままいくと約50日後(10月末頃)には88%に達する見込みで、概ね河野大臣の公表に近い割合となる。 8割が希望するという想定だと希望者の接種は完了しないと推測 以上の点を考えると、ワクチン接種希望者が対象者の8割というのは少なく見積もりすぎではないかと思われる。高齢者とほぼ同等の割合で接種が進むと考えると、河野大臣が公表した88%から90%程度が適切だと思われ、11月末までには接種完了は厳しいと思われる。 今後の必要接種回数は適切か もちろん、国からのワクチン供給がないと接種はできないため、国や県から示されたワクチン供給量が接種対象者の8割だったためこの計画になったとも考えられる。実際、上記日経新聞の記事では、「10月上旬までに12歳以上の人の8割が2回接種するのに必要な量のワクチンを自治体に供給する」としている。 しかし、それでも今後の接種回数に対する疑問は残る。それは、前提となっている8月30日の接種済み回数が不適切ではないか、と考えられるからである。 8月30日の実際の接種済み回数は48.9万回 ヘラルド船橋編集部では、8月30日に市が公表した接種済み回数を確認したところ、1回目の接種が終わったのが269,970人、2回目の接種が終わっている人数が219,715人となっていた。両方を合わせると489,685回となる。(また、上記9月9日現在の「船橋市ワクチン接種率全年代」グラフによると、9月9日時点で1回目が304,742人、2回目が245,025人で、合わせて549,767人となる。ここから見ても計算が合わない。) 船橋市は「8月30日現在接種済み回数 53.8万回(26.9万人)」としているが、実際には5万回近く少ない計算となる。これは、おそらく1回目接種完了人数(269,970人)から算出したためでは、と推測される。 よって、8割の人に接種すると仮定した場合でも、53.8万回-48.9万回で4.9万回分ワクチンがさらに必要となる。つまり、市の試算で算出された39.9万回に4.9万回をたした44.8万回が対象者の8割に接種するのに必要な計算となる。 3.4万回分不足する計算 船橋市は、公表した接種計画で、11月30日までに41.4万回の接種を行うとしている。すると、実際の必要量44.8万回から計画接種回数(見込み)41.4万回を引いた3.4万回が不足する計算となる。 期間接種回数(見込み)接種人数(見込み)8月30日から9月12日5.1万回2.55万人9月13日から9月26日6.3万回3.15万人9月27日から10月10日7.9万回3.95万人10月11日から10月24日7.5万回3.75万人10月25日から11月7日6.7万回3.35万人11月8日から11月21日4.9万回2.45万人11月22日から11月30日3.0万回1.5万人計41.4万回20.7万人 ワクチンを接種したい人が確実に接種できるように ここまで市のワクチン接種計画を検証してきたが、重要なことは計画そのものではなく、実際にワクチンを接種したい人が確実に接種できることにある。 船橋市の接種計画もモデルナ製ワクチンなどによる職域接種を除いて計算した計画であることも考えられるため、現段階で不足が確実と指摘するものではない。最終的に11月末までに希望する市民への接種が終わることが重要であり、柔軟かつ確実な接種を期待したい。船橋の今と未来を見つめる総合メディア